法定後見制度…申立理由(統計を見る)

「おひとり様」の見守り~亡くなった後のお手続きまでまるごとサポートします、千葉市稲毛の見守り隊、行政書士の礒貝です。

今回は『法定後見制度』について統計から、この制度について見ていこうと思います。

統計は、裁判所HPの『成年後見関係事件の概況』「―平成31年1月~令和元年12月-」からです。

まず後見等の「申立件数」ですが、こちらは毎年増えているわけではありません。平成31年(令和元年)は35,959件で昨年より590件減っています。かと言って毎年減少しているのではなく、増えて減って増えて…と、ここ5年繰り返しながらも少~しずつ増加しています。「申立件数」の増え方はこのようでも、『法定後見制度』の利用者数は、この令和元年の1年では、224,442人で前年比+約2.9%。毎年増えているのです。とはいえ、令和元年9月15日での日本の高齢者数は、3,588万人(総務省統計局より)ですから、この数は少なく感じますね。

ちなみに『法定後見制度』3種類ありますが、この「申立件数」で一番多いのは「後見」です。「後見」が約26,500件、「保佐」が約6,700件「補助」が約2,000件です。一度後見等が開始がされれば一生続くものですので、「誰かにお願いするしかない」という状況に本人がならないと『法定後見』の申立はしないのかもしれません。

本人の年齢別割合」を見てみると、男性は80歳以上が約35%ですが、70代も約27%と多いです。女性は80歳以上で63%、70歳以上は約19%と、男性女性とも高齢者が過半数以上を占めています。「開始原因」は「認知症」が一番多くて63.3%です。続いて「知的障害」「統合失調症」です。ただ、この二つは10%以下となっています。「本人が高齢者で認知症」という人で、申立をしているのが多いのが分かります。

気になる「主な申立の動機」については、何だと思います(・・?

答えは「預貯金等の管理・解約」でした。よく聞かれるのが、親が施設へ入るので、入居金を支払うために、親の預金を引き出そうと銀行の窓口に行ったら「ご本人でないと下ろせません」と、子供であっても引き出すことができなかった。ただ親本人は認知症で自分の名前も書けない状態で、そのことを窓口で説明すると、後見人をつけるよう言われた、との話。

確かに子どもと言えども本人とは別の人間なので、引き出して自分のために使ってしまうかもしれない…そうなると、本人以外の人にお金を渡した銀行の責任問題になってしまう恐れもあります。しかし子供からすると、目的は親本人のために使うのに、そのお金を引き出そうとして、何で窓口で止められるの、と憤りを感じるのもわかります。

あらかじめ銀行に「代理人」を指名して手続きをしておけば(『代理人届』の提出)指名された人が代わりに預金の引き出しをすることもできますが、そもそもそのような準備はしていないでしょう。

今月18日に全国銀行協会は、認知症高齢者の預金を、親族が引き出すことに条件付きで認める見解を出しました。ただ、これが浸透するにはまだ時間がかかると思います。

統計からズレてしまいましたが「主な申立の動機」、2位は「身上監護」、3位は「介護保険契約」、「不動産の処分」、「相続手続き」…と続きます。

もう一つ、この統計からお伝えしたいことは「成年後見人等と本人の関係」です。親族以外(弁護士、司法書士、社会福祉士等)が78%親族が22%であることです。親族では「子」が53%ではありますが、あくまでも22%のうちの53%です。最高裁判所は、令和元年3月に基本的な考えとして、本人の身近に後見人にふさわしい親族がいるのなら、親族後見人を選任するのが望ましいと言っていましたが、それが数字としてでてくるのはまだまだでしょう。